出版物・研究成果等
証券経済研究 第22号(1999年11月)
日本における機関投資家とコーポレート・ガバナンス
安宅川佳之(ニッセイアセットマネジメント投信常任監査役)
〔要 旨〕
最近,ROEの日米格差拡大が目立っている。グローバル市場主義化という経済システム変化の激流の中で,日本のコーポレート・ガバナンスが適切に変化できなかったのではないか。本稿では,単にコーポレート・ガバナンスだけを議論するのではなく,「経済システム変化との関連」でその在り方を捉え直す。日本のコーポレート・ガバナンス・システムを「時価発行問題を中心とする資本調達の側面 」に焦点を絞って分析する。
1970年代にはいって国家経済システムが市場主義化する中,閉鎖的で経営者独裁のコーポレート・ガバナンス機構のもとで,1980年代前半,大きな破綻を起こさなかったのはプレミアム還元ルール等のマクロ的規制に負うところが大きい。ところが,資本市場の自由化が円ドル委員会(1984年)前後から急速に進み,行政等からのマクロ的管理が殆ど姿を消した。他方,BIS規制の実施を控えて,銀行の時価ファイナンスが激増するなど,企業統治原則にも混乱が生じた。国家経済と企業の統治機構に大きなミスマッチが生じた結果 が1980年代の「バブルの発生」と,その反動としての1990年代の「厳しい資産デフレ」であったと言うことができる。
1990年代に入って,コーポレート・ガバナンスにおける株主復権の動きは見られる。経営者も外人投資家に対してはROEを意識するようになった。市場主義経済システムとコーポレート・ガバナンスのギャップは相当縮小したように思える。
とはいえ市場主義経済システムの心臓部である株式市場には投機が絡み勝ちであり,企業経営者・株主意識もまだまだ伝統的な日本型コーポレート・ガバナンスの枠を脱しきれていない。資本市場に対するマクロ的コントロールの必要性がなくなったわけではない。
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