出版物・研究成果等
証券経済研究 第26号(2000年7月)
市場間競争と上場制度
伊豆久(大阪研究所主任研究員)
〔要 旨〕
本稿は,証券取引所の上場制度を取り上げ,上場基準の変遷および上場管理の諸制度について検討したものである。
情報技術革命の広がり,証券取引のグローバル化,証券分野における規制緩和の進展によって証券取引システムは大きく変化しようとしている。とりわけ,市場開設機関どうしの本格的な競争の始まりによって,取引所は急激な変貌を遂げようとしている。
取引所は,その開設する市場において売買する証券を一定の要件を満たした銘柄に限定しているが,その適格性を維持するための制度が上場制度である。しかしながら,上場証券の適格性を判断する際の審査項目およびその基準は,時代の移り変わりとともに大きく変化してきた。そうした変化をどのように考えればよいのか,それが本稿の第一の課題である。
もう一つの課題は,市場間競争が進むなかで,上場制度を構成する要素のうちアンバンドリング(分解)可能な要素があるのか否か,アンバンドリングが生じるとすれば,それによって取引所はどのように変質するのか,を検討することである。例えば,取引所外取引の解禁は,事実上,上場管理を伴わない流通 市場が誕生したことを意味する。このように,市場間競争は,従来,取引所が包括的に提供してきた様々な機能を分解し,それぞれの機能の存立根拠を質す契機になると思われる。
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