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出版物・研究成果等

証券経済研究 第28号(2000年11月)

1990年代のイギリス四大銀行

斉藤美彦(広島県立大学助教授)

〔要 旨〕
 1990年代のイギリスの金融サービス業の動向を短い言葉でまとめるとするならば,安定的な構造の崩壊と,種々の意味でのボーダーレス化の進展ということができるかもしれない。イギリスの金融サービス業の中心をなすのがビッグフォーと呼ばれる商業銀行であるが,そこにまで大きな変革の波が押し寄せたのである。
 1980年代に海外進出に失敗し経営が悪化していたミッドランド銀行は1992年に香港本店の香港上海銀行グループ(HSBC)の傘下に入った。その後しばらくはミッドランド銀行の商号により営業していたが,1999年にはイギリス国内においてもHSBC銀行と商号を変更し,ここに1920年代には世界最大の銀行であった名門ミッドランド銀行の名前は消え去ることとなった。
 1990年代に収益が低迷したのは,ナショナル・ウェストミンスター銀行およびバークレイズ銀行の業容で1・2位 を争ってきた両行であった。両行はともに国内リーテイル部門重視(同時に支店閉鎖等のコスト削減),インベストメント・バンキングからの撤退,国際業務の縮小等の戦略を採用した。しかし,前者は結局,はるかに業容で下回るスコットランドの2銀行の買収合戦の結果 ,2000年3月にロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループの一員となった。これでビッグフォーのうちの2行までもが,イングランド以外に本店のある銀行に買収されたことになるのである。後者については,リーテイル重視を徹底させるという意味か2000年8月にウールウィッチ(1997年に住宅金融組合から銀行に転換)との合併計画を発表した。
 1990年代にビッグフォーなかで最良のパフォーマンスを示したのがロイズ銀行(ロイズTSB)であった。1980年代にすでにインベストメント・バンキングから撤退し,国内リーテイル重視の姿勢を鮮明にしていた同行は,1995年にチェルトナム・アンド・グロースター住宅金融組合を1996年には信託貯蓄銀行が前身のTSBをも吸収合併した。このような合併による規模拡大と高収益とを同行は両立させたのである。

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