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出版物・研究成果等

証券経済研究 第28号(2000年11月)

ドイツ銀行業における最近の集中傾向

藤澤利治(法政大学教授)

〔要 旨〕
 1990年代に入って,ドイツでは急速に銀行数が減少している。同時にドイツの最大手の銀行が合併や買収を積極的に推進する動向が目に付く。本稿は,このような最近のドイツの銀行業の集中傾向を分析することを目的にしている。まず最初に,1990年代の銀行数の推移を追いながらその集中の実態をみ,つづいてこのような集中を引き起こしている原因を探るために,業務内容に立ち入って検討している。
 そこで明らかになったのは,通常指摘されている銀行業における規制緩和や金融技術革新の進展,金融のグローバル化,EU経済通 貨統合の影響等のほかに,特に(1)利子収入が利鞘の縮小で停滞していること,その原因としては世界的な低金利や金融市場での競争激化が利鞘縮小につながっていること,金融業務の証券化等構造的要因によるため改善が困難であることが考えられ,それに対して(2)手数料収入が大きく成長していること,その原因として考えられるのは銀行業務の多様化に伴い様々な手数料収入が増加し,今後もそれを期待できること,特にドイツやEU域内の株式市場や債券市場が好調なことから証券関連業務が順調であること等,である。
 このような業務環境を背景に,大銀行を中心にした信用銀行は投資銀行業務の拡大に乗り出し,また,経営基盤を強化するために合併等の手段で経営費用を削減しようとしている。他方,信用協同組合はこれまでのきわめて小さい業務規模をグループ内の合併によって拡大し,競争力を強化する方針でいる。
 このように見れば,以上の傾向は今後もしばらくは続きそうで,ドイツの銀行業は一段と集中されるかもしれない。

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