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出版物・研究成果等

証券経済研究 第35号(2002年1月)

国債のRTGSの現状と課題

福本葵(当所大阪研究所研究員)

〔要 旨〕
 通信技術の発達によって,証券取引はもはや自国内に限定されたものではなくなった。証券取引がボーダーレス化する中,効率的で安全な決済制度をインフラとして持つ市場が,他国の証券市場に対し競争優位に立つことができる。そのため,各国では決済制度改革が急速に進められている。T+1さらに進んでT+0への決済期間の短縮やSTP(Straight Through Processing)等が現実のものとなりつつある。日本においても株式,国債,社債,CP等多くの証券の決済制度改革が始まっている。国債決済については,4年にわたる議論を経て,2001年1月4日よりRTGS(Real Time Gross Settlement,即時グロス決済)が稼動した。RTGSとは,一件一件の個別の資金,証券の受渡を,ファイナリティを付与して即時に行う決済方法である。RTGSによって,決済は,決済リスクの一つであるシステミック・リスクから遮断される。システミック・リスクとは,一つの当事者の決済不履行が連鎖的に他の参加者の決済不履行を招くことである。RTGSは各国の中央銀行における資金決済に採用されているものであり,既にグローバルスタンダードとなっている。
 国債取引は,RTGSが導入された2001年1月には量的に一時的な減少が見られたが,現在は通常の取引量に回復している。RTGSは導入より1年を経過して,定着したように見受けられる。しかし,現状のRTGSにはいくつかの課題が残されている。まず,保有形態の簡素化がある。これは,現物国債,登録国債,振決国債と3つに分かれた形態を統一し,ペーパーレス化して行こうというものである。次に,清算機関の創設がある。日本にも,アメリカのGSCCのような清算機関を設立し,国債決済制度の安全性や効率性を高めようというものである。さらに,フェイル・ルールの整備やいまだRTGS化されていない取引のRTGS化を進めていかなければならない。

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