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出版物・研究成果等

証券経済研究 第38号(2002年7月)

ユーロ導入とフランス金融・資本市場の変貌―新金融仲介戦略の展開―

長部重康(法政大学教授)

〔要 旨〕
 「ミッテランの実験」の失敗後,1980年代後半に大胆な金融市場改革,「ミニ・ビックバン」を成功させたフランスは,企業の資金調達構造を「借金経済」から市場ファイナンスへと大きくシフトさせた。1990年代後半にはユーロ参加を睨んで,金融市場のさらなる自由化と国営企業の大規模な民営化とに取り組み,外資の,とりわけアングロサクソン資本の大量参入を実現した。フランスの大企業・金融機関では,外資比率が急騰してのきなみ5割に達するにいたり,ディリジスムの伝統は次第に変質し,コーポレート・ガバナンスは大きく市場指向に切り替えられざるをえない。
 こうして銀行は脱金融仲介の波にますます飲み込まれていくが,これに抗して一方で,商業銀行と投資銀行間の,また銀行と保険間の融合をはかるユニバーサル・バンキング化を急ぎ,他方では,投資信託(OPCVM)を中心とする投資ファンドの多様化をすすめて,反撃に転じた。これは「新金融仲介戦略」と呼んでいいか,「情報の非対称化」を埋め,同時に「金融リスクの相互化」を可能にするものであるフランスはアメリカに次ぐ第2の投信大国の地位を強固にするにいたった。
 「ミッテランの実験」の失敗後,強いフラン政策といういわば「ドイツ化」政策をすすめることで経済の立て直しをはかって成功したフランスは,今やドイツを上回る経済パフォーマンスを挙げるにいたった。ユーロ誕生を迎え今度は,経済の「アングロサクソン化」によって,グローバリゼーションの挑戦に勝利しようとしいるのであろう。

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