出版物・研究成果等
証券経済研究 第42号(2003年6月)
ドイツ機関投資家と株式市場
飯野由美子(敬愛大学教授当所客員研究員)
〔要 旨〕
1990年代後半にドイツの金融は,株式カルチャーの定着など戦後これまでにない大きな変化を遂げた。それについては個人の老齢保証を意識した金融資産形成の結果 拡大した機関投資家の役割が大きい。
そこで,本稿では,まず機関投資家の資金運用を分析した。膨大な個人の資金を吸収した生命保険では,伝統的に債務証書貸付,記名債への運用が大きいが,近年,機関投資家向け投信(スペシャルファンド)が増加している。
では,それを受けた投信の資金運用はというと,1990年代末,劇的に株式,とくに外国株への投資比率が増加している。結局,投信の運用の株式化がポイントとなって機関投資家全体の株式保有全体に占める比率は1990年代急速に大きくなったのである。
この無視できなくなった機関投資家の株式保有がコーポレート・ガバナンスにおける機関投資家の役割増大をもたらしているかを,最後に検討した。検討資料となるアンケート調査は1990年代末の株高期を含んではいないが,結論としては,依然,機関投資家の経営への積極的関与姿勢は見られないものの,企業側は将来機関投資家との対立が増えると予想している。現状では,機関投資家は株主総会で議決権を自ら行使せず銀行が代理議決権行使しており,総会での発言も稀である。その代わり経営陣と頻繁に会談は行うが,そこで経営の方針に影響を与えるというよりは,経営陣・会社の質を見極め,悪ければ株を売却する姿勢をとっている。
補足的に,銀行の投信保有が1990年代顕著に増加していることを見た。この実態は,規制緩和が進んだとはいえ単独でリスク資産への投資をマネージすることが難しい小規模の貯蓄銀行,信用協同組合によるものが主体である。
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