出版物・研究成果等
証券経済研究 第42号(2003年6月)
アメリカ年金制度の改革
磯谷玲(宇都宮大学助教授当所客員研究員)
〔要 旨〕
エンロン破綻は様々な分野に大きな影響を及ぼしたが,年金制度においても様々な議論が行われた。本稿では,まず,最近の制度改革論議と関わる点での年金プランの動向や特徴を明らかにし,ついで,議会の論議を検証した。
議会の対処は,エンロンの事例は真剣な検討を要するものの,基本的には例外的であり,従来の年金制度が変更されてはならないとする経営者側の主張がとおった形で決着したが,議論の過程で様々な問題が浮かび上がった。主な問題としては,(1)スポンサー企業株式への投資のもつ問題(2)年金管理に関する問題である。スポンサー企業株式への投資は,一攫千金を夢見る行動としてイメージされがちである。もちろんこのような行動をとる層,とらざるを得ない層が存在することは事実であるが,実態は厚い確定給付型年金プランをもつ層が最もスポンサー企業株式への投資を行っている。このことは日本の資本市場や年金制度に大きな示唆を与えるものと考えられる。
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