出版物・研究成果等
証券経済研究 第47号(2004年9月)
米国株式オプション市場の変貌
吉川真裕(当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
アメリカの株式市場では取引所上場銘柄の8割はNYSEで取引されているが,株式オプション市場では上場銘柄の棲み分けが行われ,取引の集中はさほど生じていなかった。こうした上場銘柄の棲み分けが生じたのは,1980年にSECがくじ引き方式による新規上場銘柄の振り分けを採用したことに遡る。その後,SECは方針を転換し,重複上場によって市場間競争を促進しようとしたが,5つの取引所と業界の反対から実質的にSECの決定が覆される形になっていた。
ところが,1999年2月にISEと名乗る電子オプション取引所がSECに取引所認可申請を行い,2000年第1四半期に電子オプション取引所を開設する計画が明らかになり,他方,既上場銘柄の重複上場を回避したオプション取引所の動きを司法省が独占禁止法違反の疑いで調査をはじめたことから,CBOEが1999年8月に紳士協定を破って重複上場を活発化させ,他の取引所もこれに追随し,アメリカの株式オプション市場は様変わりすることになった。
2000年5月に取引を開始したISEは2001年10月には取引シェアが13%に達し,CBOE,AMEXに次ぐアメリカ第3の株式オプション取引所へと急成長した。そして,2003年1月には取引シェアは25%に達し,AMEXを追い抜き,アメリカ第2の株式オプション取引所となり,翌2月には取引シェアが27%に達し,株価指数オプションを除けばCBOEを追い抜き,2004年2月には株価指数オプションを含めた月間売買高でもCBOEを上回り,文字通りアメリカ最大のオプション取引所となった。
こうしたISEの急成長は米国株式オプション市場における取引シェアの変動をもたらしただけでなく,重複上場銘柄をめぐる市場間競争やISEに対抗する既存取引所の電子化等,株式オプション市場を取り巻く状況を一変させた。今後もISEの成長は続きそうであるが,他の取引所がどのような対応を見せるのかが注目されるところである。
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