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出版物・研究成果等

証券経済研究 第48号(2004年12月)

グーグル社の公開と米国の株式発行市場

福田徹(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 情報処理及び通信技術の発達が,証券市場に対して絶大な影響を与えている中,株式発行市場においても新たな動きがあった。それは,検索エンジン運営企業の最大手グーグル社の公開である。同社は,引受業者の不祥事の再発防止,引受手数料の削減を目的として,公募・売出価格の決定について電子オークションを採用した。つまり,インターネットを通じて,同社の株式の購入希望者を募った上で価格を決定し,株式の配分も定められたルールで行うのである。また,他の目的として自ら適正な公募・売出価格を見出すことも挙げられよう。なお,実際の公開までに多少の紆余曲折があったものの,同社の株式は2004年8月19日にナスダック市場に登録され,株価はその後も順調に上昇している。
 但し,同社がこのスキームを利用した目的である適正な公募・売出価格の発見には議論の余地がある。なぜなら,初値が公募・売出価格を17.6%上回り,3ヵ月後に99.3%もの暴騰を演じているからである。この理由として,Benveniste and Spindt(1989)が提示した「機関投資家が所持する情報への対価モデル」における状況が指摘される。つまり,情報提供面において公平に扱っても,個人などの小口投資家は,独自に価格の推定等の私的情報を生産出来ないため,機関投資家の優位性に変化が無い。よって,機関投資家が私的情報の対価分を公募・売り出し価格の割引分をこれまでと同様に要求したのである。これに関して言えば,同社のスキームは,既存のものと比較して多大なメリットがあると判断出来ない。但し,コスト面でブック・ビルディングを行えないような小規模な株式公開の場合,利用価値があると考えられる。

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