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証券経済研究 第49号(2005年3月)
中国上場企業のジレンマ:規模の拡大と収益の低下
テキ林瑜(大阪市立大学教授)
〔要 旨〕
中国の経済成長を牽引する中国企業は,「投資飢餓症」や「工場乱立」等の言葉に形容されるように投資と生産の拡大志向が強く,そのおかげで「世界の工場」と呼ばれるような存在までになった。他方,「利益なき成長」や「豊作貧乏」といった言葉にも象徴されるように,ここ10年間,中国企業の収益性が一貫して低下してきた。規模の拡大と収益性の低下というジレンマからなかなか脱却できない中国企業の行動をモデルで接近し,上場企業の財務データで検証することが本稿の目的である。
中国企業の経営者行動をモデルで記述した後に上場企業の財務データで検証した結果,中国企業は規模の拡大と収益性の低下というジレンマに陥っており,企業のエージェンシー・コストが極めて大きいということを明らかにした。また,生産物,原材料や中間財といった実物財の市場競争だけでは,資本という希少資源の配分効率性を上げることができず,資本市場とくに銀行によるコーポレート・ガバナンスのメカニズムを早急に確立することが中国企業と中国経済の成長を健全で効率的なものにするために必要である,ということも結論づけた。
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