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証券経済研究 第50号(2005年6月)
ロンドン証券取引所買収提案の帰結
吉川真裕(当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
2004年12月13日,ロンドン証券取引所は1株5ポンド30ペンス(総額13億5,000万ポンド)のドイツ取引所による買収提案を拒否したことを公表した。しかし,買収提案価格が低すぎるということを理由としており,引き続き条件交渉をおこなっていくことも明らかにされた。これを受けて,ユーロネクストからもロンドン証券取引所に対する買収提案の意向が示され,12月から1月にかけて両当事者の間で買収条件の交渉がおこなわれた。そして,2005年1月27日にドイツ取引所がロンドン証券取引所に対する買収提案の内容を公表したことで,事態は緊迫したものとなった。
ところが,ロンドン証券取引所に対する買収交渉は3月6日にドイツ取引所が株主の反対を考慮して提案を撤回し,3月29日にはドイツ取引所とユーロネクストからそれぞれ買収提案の審査を要請されていたイギリスの公正取引庁(OFT)がイギリス株式の取引をめぐる競争を阻害する恐れがあるという判断を示したことにより,実質的には立ち消えという形になった。
今回のドイツ取引所によるロンドン証券取引所買収提案はドイツ取引所またはユーロネクストによるロンドン証券取引所の買収は今後とも認めないというOFTの判断を引き出したことにより,ヨーロッパ株式市場統合の行方を左右しかねないものとなった。今後は三大取引所の競合を前提とした決済市場の統合がヨーロッパ株式市場統合の課題ということになろう。
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