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証券経済研究 第51号(2005年9月)
産業特性と企業所有の長期的関係について―繊維業・機械業における規模別分析―
米村浩(東海大学政治経済学部助教授)
〔要 旨〕
経営者主導というBerle and Means流の近代的企業像においては,企業所有の分散化(株式所有の分散化)が時系列上で必然的に実現していくことを前提としているが,La Porta et al論文など過去のいくつかの研究ではこれと反する実証があった。企業所有に関して長期的に分散化傾向は確認できるのかそうでないのか,未だ議論のあるところである。本稿では,約60年4期に亘る企業規模別投資家別のデータと「株式分布状況調査(全国証券取引所協議会等)」を用いて,繊維業・機械業という産業別に株式所有の検証を行い,事業法人の株式所有シェアが繊維業では低く機械業では高かったことや,事業法人の株式所有シェアは繊維業では次第に減少しているが機械業では同シェアは上昇していることなどの結果を得た。この解釈として,本稿では,株式所有構造に関して経済全体として一律の性質として捉えるのではなく,産業固有の事情を強調するというHoffmann的な産業二元論を採用し,繊維業には株式所有の分散化傾向を,機械業には株式所有の非分散化傾向という,産業別に異なる傾向を指摘した。すなわち,株式所有の問題は,産業別に異なる結果を出してしまうので,全産業一律を前提として結果を求めているLa Porta et alらの解釈は,修正すべきものであると結論づけた。また,産業を越えた共通の長期傾向として,2000年頃までの金融機関(銀行・機関投資家)の株式所有者シェアの上昇も指摘した。
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