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証券経済研究 第51号(2005年9月)
東京都による行政主導型CDOの現状と課題―行政主導型CDOを発展させるための条件―
森谷智子(明治大学経営学部兼任講師)
〔要 旨〕
東京都は,2000年以降,中小企業の資金調達手段の多様化と,中小企業向け債券市場の創設を目的に,行政主導型CDO(Collateralized Debt Obligation,債務担保証券)を実施している。今日では,東京都によって取り組まれている行政主導型CDOが代表的なモデルとなり,多くの地方自治体もこのCDOに取り組むようになってきている。
本稿の目的は,東京都の取り組みを中心に,行政主導型CDOの現状を検討し,行政主導型CDOを中小企業の資金調達手段として進めていくうえでの必要な施策を検討することである。本来,地域に密着した民間の金融機関が中心となり,中小企業向けCDO市場の拡大が図られるべきである。しかしながら,バブル崩壊以降,金融機関は,不良債権処理の問題などを抱えるとともに,BIS規制における自己資本比率の改善のために貸出資産の圧縮に迫られてきた。そのため,金融機関は優良な中小企業の融資に対してでさえ消極的にならざるをえなかった。このような貸し渋りの問題に対応する目的で,地方自治体が主導となりCDOを活用した資金調達手段が政策的に築き上げていったのである。
現在,金融環境の変化から優良な中小企業は,銀行融資を受けやすくなってきている。そのため行政主導型CDOに参加を申し込む中小企業数が減少してきている。行政主導型CDOを地方自治体の一時的な取り組みで終わらせるのではなく,今後,推進させていくために,いくつかの問題点を指摘する。そのうえで,行政主導型CDOに係わる行政,信用保証協会,金融機関の果たすべき役割,そして必要条件をそれぞれ検討する。さらに,行政主導型CDOが中小企業の資金調達手段として軌道に乗った際には,民間の金融機関がこれまでの行政の役割に代わって,中小企業のためのCDO市場を創りあげていくべきことを主張する。
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