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証券経済研究 第52号(2005年12月)
日本証券取引所の創立と活動(上)
小林和子(当研究所主任研究員)
〔要 旨〕
戦前証券史の最終局面で創立された日本証券取引所は,自由市場時代の株式組織・有価証券取引所に対して著しく大きな転換をもたらした制度でありながら,その名称以外には知られるところが極めて少ない。戦後60年を経て,日本証券取引所時代を直接に知る関係者はいまやほとんど居らず,研究者レベルでも興味を持つものは皆無に近いであろう。筆者は,別途,日本証券経済研究所『日本証券史資料』戦後編(昭和20〜40年)・戦前編の編纂を続けており,戦前編第三巻「株式取引所の歴史<全外B43C>」,第四巻「株式取引所の歴史<全外B43D>」として関係資料をまとめる機会を得た。歴史に求心力が薄れた現在,おそらく最初にして最後のチャンスかもしれないと思い,日本証券取引所に関する資料をできる限り整理・保存に努め,その資料を基にして同取引所の創立と活動について概観を得た。
証券取引所の歴史は,戦前期の大半は明治26年取引所法による民間・株式組織取引所の,商品取引にひきずられた投機的な個別銘柄先物取引であった。この国独特の,江戸時代からの米取引の経験に色濃く染められていたのが特色である。これに対して戦後は,占領国である米国の証券制度を取り入れ,昭和23年証券取引法全面改正法により,民間・会員組織取引所の,国民経済に対する寄与と投資家保護を明確に打ち出した投資取引,実物取引を定着させてきた。商品取引から証券取引へ,投機から投資へ,株式組織から会員組織へ,プロの市場から大衆基盤型市場へ,これほど大きな転換を遂げるに当って,戦後の占領政策が決定的な推進力になったことは確かであるが,他方でこれを受け入れる土壌の鋤返しは日本市場の内部ですでに行われていた。それが日本証券取引所の創立に至るまでの経緯と創立後の活動の中から,戦時色を保護色としつつ読み取れると考える。本論文(上)では創立までを,次回論文(下)では創立後の活動を見る。
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