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証券経済研究 第52号(2005年12月)
財政投融資改革と公的部門の国債保有
代田純(駒澤大学教授・当所客員研究員)
〔要 旨〕
日本の国債に関わる問題点のひとつは,保有構造において公的部門の比重が著しく高いことであろう。750兆円を超す国債の残高という量的指標,また一般政府債務残高の対GDP比が161.2%という国際的に突出した指標も問題であるが,保有構造も国際的に特異である。財政融資資金,郵便貯金,簡易保険といった「政府等」の保有比率が40.8%に達し,また広義では公的部門に含まれる日本銀行の保有比率も14.5%あり,合計で55.3%と過半を超えている。このことは,日本の財政金融政策に対し,深く影響しているとみられる。約10年におよぶ「ゼロ金利政策」,国債買い切りオペを主軸とした「量的緩和政策」も,こうした国債保有構造と密接に関連していよう。
本稿では以上の問題意識を背景として,財政投融資,とりわけ計画外の短期運用による国債保有の動向,さらに公的部門として簡易保険による国債保有を取り上げる。財政投融資は改革後,「入口」の資金が減少しているが,「出口」の公的金融機関による貸出も抑制されており,結果として「中間」において資金余剰が発生している。このため,計画外の運用規模が拡大し,特に短期運用による国債保有が膨張している。
財投改革前に簡易保険は財投協力として運用部に預託してきたが,改革後は預託廃止となった。改革前の財投預託は7年であったため,簡保の負債とある程度は期間対応していた。しかし財投改革後,簡保の資産構成において国債の比重が急激に上昇しており,しかも国債市場全体の動向を反映して,簡保が保有する国債の残存期間構成も短期化している。このため簡保のALM(資産・負債管理)は期間対応の面で問題がある。また資産において著しく国債の比重が高まり,金利上昇による評価損の発生リスクも高まっている。こうした状況を踏まえると,簡保本体による株式投資,または中小企業むけ貸出(さらに貸出債権の証券化)など資産の多様化が検討されるべきだろう。
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