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証券経済研究 第53号(2006年3月)
年金基金の受託者責任とガバナンス機能の有効性
若園智明(当研究所研究員)
〔要 旨〕
近年の『証券市場の構造改革プログラム』や,資本市場法制を横断的,一元的にまとめた「金融商品取引法案」など一連の市場改革は,高齢化等により家計のライフ・スタイルが多様化した結果,必要とされる金融資産の組合せが増えたことに対応したものであるとも言える。高齢化を考えた場合,「老後の生活資金」を目的とした資産形成には,安定的,効率的な資産の長期運用が必要であり,年金基金に代表される長期機関投資家が果たす役割は重要である。また年金基金は,単に家計の資産形成を代行するだけではなく,家計の代理人として行動することによって,資本市場の効率性や企業経営にも大きな影響を及ぼす。家計の高齢化は更に進展することが予想されるため,年金基金の役割と機能に関して,より詳細な分析が求められている。
本稿の目的は,年金基金の受託者責任への取組みを概観し,年金基金のガバナンス機能が企業経営と資本市場に与える影響を分析することである。2001年を境にして,わが国の主要な年金基金は議決行使を積極化させており,同時期以降,ガバナンス機能も変化している可能性がある。個別企業のデータを用いたパネル分析の結果からは,2001年を境として,年金持株比率と企業の収益性や株価パフォーマンスとの関係が正に変化している可能性が提示されている。これは,近年になって年金基金のガバナンス機能が有効となっている可能性を示唆していると思われる。
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