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証券経済研究 第55号(2006年9月)
地域再生ファンドとデット・デット・スワップ
松尾順介(桃山学院大学経営学部教授・当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
投資ファンドによる企業再生が注目されているが,近年地方の中堅・中小企業を対象とした地域再生ファンドの設立が相次ぎ,現在殆どの都道府県に普及している。これら地域再生ファンドは,地域金融機関のリレーションシップ・バンキングへの取組みの一環という側面が強い。本論文では,前半でこれらの地域再生ファンドの現状を概観し,地域再生ファンドが地域金融機関との結びつきの上で設立・運営されていることを確認するとともに,アンケート調査をもとに,地域再生ファンドの投資実績が積み上がっているとはいえない現状を考察する。後半では,近年リレーションシップ・バンキングに基づく企業再生策として注目されているデット・デット・スワップ(DDS)を取り上げ,地域再生ファンドによるDDS利用事例を検討したうえで,そのメリットと課題を検討する。
このような考察を通して,地域金融機関も債務者企業にも早期再生や徹底した事業再構築のインセンティブが弱いため,ファンドを利用することで透明かつ徹底した処理がなされることを躊躇する傾向が強いことを指摘した上で,地域金融機関の過剰債務企業に対する取組み,とりわけ徹底した事業再構築に踏み込んだ取組みが重要であることを示唆する。なお,地域再生ファンドに関する研究の現状は,その設立からの経過年数が短く,数量データが蓄積されていないため,先行研究は多くない。本研究において,インタビュー調査,アンケート調査およびケーススタディなどを通じて,地域再生ファンドの現況を整理し,明らかにしたが,今後データが蓄積されれば,実証研究が可能となるものと思われる。なお,本研究によって,地域金融機関による債務者企業の事業再構築への取組みと,地域再生ファンドの実績との相関性に関する実証研究への示唆が得られたものと思われる。
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