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証券経済研究 第56号(2006年12月)
地域密着を可能にする仕組みとは
―米銀数の30%を占めるSコーポ銀の分析から―
内田聡(茨城大学人文学部助教授)
〔要 旨〕
本稿は,施行から10年弱で米銀数の30%を占めるに至った,Sコーポレーション(株主数や株式の種類は制限されるものの法人所得税が免除される株式会社)銀行の実態を分析するものである。
米国では1994年の地理的規制の緩和から,メガバンクが多くのコミュニティバンク(CB)を買収したが,メガの戦略や組織規模・形態では満たしにくいニーズを,既存や新設のCBが取り込んでいる。立法面でも銀行集約と異なる動きはいくつかあるが,Sコーポについて言えば,1958年に一般の中小企業向けに制定された仕組みが,1997年に銀行へも適用可能となり急速に広がっている。
Sコーポは二重課税回避の目的で制定されたものだが,これを越えた影響を金融システムに与えている。データ・業界資料・現地調査などの多面的な接近から,以下の暫定的な結論を得た。(1)金融再編でCBは集約される一方,法人所得税免除という新たな組織形態を得た。(2)存在意義については見解が分かれるものの,Sコーポ銀行は既に定着している。(3)当初は田舎の農業銀行からのSコーポ化が多かったが,近年は都市の商業銀行のそれが増大している。(4)Sコーポのパススルー課税は,銀行の新設を促す側面もあり,その範囲は人口増大地域に限らない。(5)Sコーポ銀行の仕組みは,人口減少(郡や市単位では多くの地域が該当)や金融ニーズの多様化に対応する手段の1つと考えられるだろう。
わが国でも再編が進んだが,地域金融機関の集約が問題だろうか。米国の集約と分散に学ぶものはないか。
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