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証券経済研究 第57号(2007年3月)

昭和恐慌からの回復に対する貸出と資本市場の寄与

原田泰((株)大和総研チーフエコノミスト)
鈴木久美(早稲田大学政治経済学術院政治経済学部研究助手)

〔要 旨〕
 昭和恐慌期前後には多くの銀行が破綻し,それが恐慌を悪化させた重要な要因であったとされている。しかし,昭和恐慌期を含むこの時期においても,資本市場における資金調達は拡大し,特に社債の増加が著しかった。すなわち,昭和恐慌期の後に,民間部門の資金調達手段が,銀行中心の間接金融システムから資本市場を中心とした直接金融システムに移行している。
 一般に,銀行貸出が生産に影響を与えるのは,銀行が企業の経営状況について特別な知識を有し,それは株や社債などの債券では代替できない,ないしは代替に大きな制約があるという前提にたっている。ところが,昭和恐慌期前後の企業が,その回復と成長を,銀行貸出よりも資本金の増加や社債によって賄ったということは,そもそも銀行貸出と他の資金調達手段との代替性が低いという前提が誤りであるという可能性が強い。
 本論文では,昭和恐慌期前後の大企業の産業別データを利用し,固定資産の成長と資金調達の関係について分析を行った。これまで,この関係を数量的に分析したものは乏しい。分析の結果,固定資産の増大と借入の増加との相関は弱く,資本金,社債などとの相関が強い。すなわち,昭和恐慌前後期の企業の回復と成長を支えたのは,銀行ではなくて,資本市場であったことがわかった。

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