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証券経済研究 第61号(2008年3月)
クロッシング・ネットワークの現状
―その取引メカニズム、経済的意義、研究の動向を中心に―
福田徹(当研究所主任研究員)
〔要 旨〕
クロッシング・ネットワークとは証券取引メカニズムの一形態であり,主に株式の取引に利用されている。なお,その仕組みであるが,売買注文を集めた上で,取引所などの外部の証券取引メカニズムから取得した価格で取引を成立させるという点に特徴がある。なお,この特徴は,多くの市場参加者の前に晒されることで様々な困難に遭遇する大口注文の執行がより円滑になることを目的としたものである。情報技術の発達により利便性が高まったこと,呼び値単位の縮小によって大口注文の執行がより困難になったことなどから,クロッシング・ネットワークを通じた取引量は急速に拡大し,2006年末において一日平均で4.2億株となり,アメリカ株式市場全体の10%近くを占めるまでに至ったと見られている。
なお,クロッシング・ネットワークに関する理論モデルおよび実証研究はそれ程多くない。理論モデルに関しては,クロッシング・ネットワークとディーラー市場が併存する下で,取引を望む投資家がいずれを選択するべきかその条件を探ることを目的としているものが多い。一方,実証研究については,クロッシング・ネットワークと証券取引所などの間の価格形成の関連性や執行コストの比較などについて行われている。これらの研究によって,クロッシング・ネットワークの特徴の一端を把握することができる。ただし,合理的な価格形成に対する影響など,クロッシング・ネットワークの普及によって懸念される問題点に関する研究は,ほとんどなされていないのが現状である。
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