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出版物・研究成果等

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証券経済研究 第61号(2008年3月)

経済の成熟と金融・証券市場の変容

熊野剛雄(専修大学名誉教授)

〔要 旨〕
 日本の証券市場の現在の特徴は第1に株式流通市場の極端な不振であり,第2にライブドア事件に象徴されるように改正され,自由化あるいは緩和された規制を悪用(abuse)する事例が発生していることであり,第3にはファンドによる株式買占めや経営権の要求などが頻発していることである。
 こうした事態の根底には従来の証券市場を必要とし,発展させて来た基礎的条件が変化していることがある。19世紀末に証券市場を確立させる基本的動因となった重化学工業は20世紀,21世紀においては最早中核的産業ではない。したがって成熟した経済を持つ先進国においては長期資金需要は衰え,とりわけ製造業の資金需要は著るしく停滞している。
 しかし一方では貨幣的資産の集積は著るしく巨大化し,さらに激しい銀行集中によってメガバンクが誕生した。巨人化した銀行は巨大な信用創造能力を持つが,これに対応する借入需要は乏しい。このような資金需要の衰退と資金供給能力の巨大化という矛盾が金融投機となっている。とりわけアメリカは経済のサービス化,金融化が著るしく,わが国においてもアメリカ型経済を日本経済の範とすべきだとの論が有力であるが,通貨の基本的条件の異る日本ではアメリカ型の金融優位,消費先行型の経済は成立し得ない。又新産業を証券市場に迎え入れるに当っては,投資家保護を最優先し,参入に慎重であるべきである。

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