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証券経済研究 第61号(2008年3月)
世界金融資本主義と金融・資本市場の変容
鈴木芳徳(神奈川大学名誉教授)
〔要 旨〕
小稿は,近年における「世界金融資本主義」発展の諸様相について,大局的・包括的理解を目的とするものである。1929年の世界恐慌の帰結として,Glass-Steagall法を始めとして,銀行並びに証券市場に対する様々の規制が設けられたが,その後,この種の規制はLiberalizationの名のもとに次々と外され,遂には世界的規模での活躍が可能とされるに至った。かつての「経営者資本主義(managerial capitalism)」は,今や「世界金融資本主義(global finance capitalism)」にとって代わられた。
かくて,(1)金融資産の肥大化が生じ,(2)銀行業の地位が相対的に低下するとともにその業容が変化し,(3)多様な金融派生商品が生まれ,(4)ヘッジ・ファンド等の活躍を見るに至り,(5)国際的金融資産ならびに債務の保有が増大した。
しかも,世界的な規模でのM&Aの増大は,各国の社会的文化的な姿を書き換えつつあり,暗黙の信頼によるというのではなく,明示的可視的な契約で物事を運ばざるを得ない状況が一般化するに至っている。
こうした変化は,富と所得の集中を生むとともに,そこに伏在するリスクが果たして制御可能なものかどうか,大方の危惧するところとなっている。また,同時に,そうした変化が生み出しつつある,対極に位置する一群にも観察の目を向けるのでなければなるまい。
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