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証券経済研究 第61号(2008年3月)

米国株式市場規制「レギュレーションNMS」

吉川真裕(当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 2007年7月9日,ニューヨーク証券取引所(NYSE)上場の100銘柄,ナスダック証券取引所(Nasdaq)上場の100銘柄,アメリカン証券取引所(AMEX)上場の50銘柄を対象として,レギュレーションNMSと呼ばれる株式市場規制が適用され,2007年10月8日には5,000銘柄を越えるすべての全米市場システム(NMS)適格株式に対して,レギュレーションNMSが施行された。
 レギュレーションNMSにたどり着くことになった証券取引委員会(SEC)委員長の呼びかけから8年を要したが,1990年代に進んだ株式市場の電子化に対してSECが試みた全米市場システムの手直しがようやく一段落した。レギュレーションNMSは1970年代に導入された全米市場システムを株式市場の電子化に適応させる総合的な試みであり,米国株式市場を理解する上では欠かせない。
 2005年4月6日のレギュレーションNMSの導入決定から数日後にはNYSEとArca取引所の合併計画,NasdaqのINET買収合意が発表され,レギュレーションNMSが米国株式取引市場にもたらす影響の大きさを物語っていると言えよう。そして,2006年6月1日にはNYSEがヨーロッパの取引所連合ユーロネクストの経営陣との合併合意に達し,2007年4月4日には環大西洋取引所となった。さらに,2007年5月25日にNasdaqが北欧の取引所連合であるOMXとの合併合意に至っている。
 こうしたグローバルな取引所の再編といった動きにまでたどりついたのも,もとはと言えばアメリカ国内での市場間競争の激化であり,それを後押ししたレギュレーションNMSであったと考えられる。一国の規制の変化がこれほど大きな影響を及ぼした例は他には見当たらないだろう。

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