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証券経済研究 第62号(2008年6月)
「金融・資本市場競争力強化プラン」と国内取引所の課題
土屋陽一((社)日本経済研究センター研究員)
〔要 旨〕
2007年12月,金融庁より「金融・資本市場競争力強化プラン」が発表された。取引所強化の対策として,上場商品の多様化と取引所の相互乗り入れによる総合化が打ち出された。これは,国内最大の規模をもつ東証の低迷に対する危機感が背景にある。世界的な統合再編が進む近年の取引所にあって,国内取引所の存在感は低い。1990年以降のより長い期間でみた取引高や時価総額をみても,東証の低迷は顕著である。さらに,2005年末から続くシステム障害で東証の信頼は損なわれた。
国内の取引所自身も対応策を打ち出し,積極的な姿勢を取り始めている。東証は,取引システムの大幅な能力増強のため,「ITマスタープラン」を発表し次世代システムへの移行を行っている。さらに,大証は上場商品の充実を図るために,海外オプション取引所との提携を発表するなど,新しい動きも目立つようになった。
しかし,依然として課題は残っており,それらを乗り越えて,東京あるいは日本が世界の金融・資本市場で存在感を高めていくためには,発想の転換が必要となる。これまでの取引慣行や方法を見直すことも求められる。また,国内の取引所問題と言うと,東証ばかりに注目が集まりがちであるが,今後は東京工業品取引所など商品取引所の動向が重要になると考えられる。
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