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証券経済研究 第64号(2008年12月)
地域銀行の投信窓販に関する範囲の経済性
森祐司(早稲田大学大学院博士後期課程)
〔要 旨〕
本稿は「貯蓄から投資へ」という金融システムの一つの変化を示す銀行における投信窓販業務を取り上げる。地域銀行を対象に,近年拡大を続けている投資信託の窓口販売業務について,従来業務である貸出業務や市場運用業務との範囲の経済性について検証した。推計の結果,投信窓販業務と地域銀行の主力業務である貸出業務との間で,範囲の経済性は概ね有意に観測された。また,地域銀行を地銀・第二地銀,上位行・下位行,都市圏・地方圏を地盤とする銀行などのグループ別に分けて分析しても,投信窓販業務と貸出業務の間での範囲の経済性が有意に観測された。第二地銀,地方圏,下位行といったところでは,投信窓販業務はようやく本格化し始めたところであり,他のグループの地域銀行や都市銀行と比べると投信窓販の進展はまだ遅れている。しかし,それでも投信窓販を拡大することによる限界的な費用節約効果が観察された。以上の結果から,地域銀行は投信窓販業務を展開することで,収益源の多様化や顧客の囲い込み(確保)などの効果のほかに,既存業務との範囲の経済性という効果も享受できていたことが示唆される。地域銀行の非資金収益の中でも投信窓販業務はその主力であり,業務多様化や範囲の経済性のメリットがあることから,さらなる進展も期待される。
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