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証券経済研究 第64号（2008年12月）
イギリスにおける住宅ローン担保証券（ＭＢＳ）市場の展開
簗田優（獨協大学大学院博士後期課程）
〔要 旨〕
イギリスにおける住宅ローン担保証券（MBS）市場は，現在ではアメリカに次いで世界第2位の市場規模となっている。しかし，イギリスでのMBSの発行には，世界最大の市場であるアメリカで発行する際のような公的な支援はなく，それゆえイギリスのMBS市場は，市場への参加者に主導されて現在に至った。そのような要因もあり，イギリスのMBS市場はアメリカのように順調に拡大を続けてきたわけではなかった。
イギリスでMBSの発行が開始されたのは1980年代の後半で，この時期には住宅市場の拡大にも支えられて第1次MBSブームが起こった。そして，このブームはモーゲージカンパニーに主導されたブームであった。しかし，イギリス経済が不況に陥った1980年代末から1990年代の初めにかけては住宅市場も停滞し，それに伴いモーゲージカンパニーが経営難に陥り市場から撤退すると，第一次MBSブームは終了した。
イギリス経済が回復し，住宅市場も再拡大を始めた1990年代の中頃以降には，第2次MBSブームが起こった。ただし，このときのブームは以前とは異なり，銀行（住宅金融組合からの転換組みを含む）に主導されたブームであった。そして，2000年代に入るとMBS市場の拡大は急速となり，特に2005年以降は著しく拡大した。しかし，2007年の後半にアメリカでサブプライムローン問題が発生すると，その影響を受けてイギリスのMBS市場も停滞し，現在も先行きの不透明な状況が続いている。
本論文では，はじめにイギリスにおける住宅ローン市場とMBS市場の展開を検討し，その後，近年の混乱した金融市場およびMBS市場で発生したイギリスの金融機関の危機等についても分析を行った。
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