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証券経済研究 第66号(2009年6月)

EUにおける金融危機と公的金融の復活

代田純(駒澤大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 本稿の課題は,EUにおける金融危機と危機対策としての財政金融政策を明らかにすることである。この場合,EU加盟国の国民国家財政ではなく,EUの共通財政とEUの公的機関としての欧州投資銀行(EIB)に注目する。今日の財政金融政策は,なお国民国家を枠組みとしているが,国家という枠組みを超えた政策対応の重要性が増しているからである。EIBはEU加盟国の共同出資による,国家を超えた金融機関である。
 EUにおける2007年以降の金融危機もアメリカと同様に深刻な問題であった。欧州を代表する多国籍銀行(UBSやドイツ銀行など)が,アメリカにおいて証券化商品を大量に購入していたため,巨額の損失を計上した。与信の収縮はEUに伝播し,自動車ローンの縮小等を介して自動車販売台数の激減,欧州自動車会社の経営危機とリストラ,そして失業増加と広がりを見せた。またスペイン,アイルランド等での住宅価格低下,中東欧での不良債権問題とEUとその周辺において危機は拡大した。
 こうした金融危機に対し,EUは2000億ユーロに達する緊急対策を打ち出したが,そこでは共通財政とならび,公的金融としてのEIBが活用されることとなった。そこで本稿では,EU共通財政の歴史とEIBの現状を踏まえ,EUにおける金融危機対応の一面を明らかにしたい。

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