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証券経済研究 第67号(2009年9月)
戦前期商法に見る証券関係規定の変遷(試論)
小林和子(当研究所主任研究員)
〔要 旨〕
商法の条文というものは非常に長く,専門家でないものにとっては全体の構成を理解するどころか,目次を眺めただけで気力が尽きる。戦前期の商法となればなおのことである。さりながら,証券市場の歴史を専門とするならば,民間証券発行者の最大グループである株式会社について,法がどのように捉えてきたか,株式会社の発行する証券についてどのように捉えてきたかを知らずに研究することはできない。筆者は法律研究者ではないので深く知ることは不可能であるとしても,これらの主たる論点について明治期以来の歴史を確認し,どういう状況で自由市場時代が終り,統制経済下で商法の原則が特例法によって超えられたかをまとめておきたい。商法そのものの歴史であれば明治初年の商法上の約束事にまで遡るべきであろうが,株式会社とその発行証券に限ってみるため明治17年ロエスレル商法草案を基点として,旧商法(明治23年,26年),新商法(明治32年)及びその昭和13年改正までを対象にして,会社の種類,株式会社設立の規制,新株発行と債券発行の分化,株券記載事項,株式の譲渡に関する規定,取締役の株式保有,自己株式の取得,社債に関する規定などの論点の推移を辿った。昭和13年改正で自由市場時代の株式会社法制は一応確立されたといえ,その後は統制法による特例,修正の時代となった。
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