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証券経済研究 第67号(2009年9月)

中国の都市部における大衆投資家の形成(上)―個人投資家調査を中心に―

王東明(摂南大学准教授)

〔要 旨〕
 改革・開放以降に形成された中国の株式市場は,特に流通市場においては,個人投資家を中心に売買され,2008年末現在の個人投資家の登録口座数はすでに1億2000万を超えている。中国の個人投資家は,経済成長の中でどんな特徴を持ち,どのような投資スタンスを持っているかを考察する必要がある。本稿では,1993年からスタートした『中国証券報』の16年間の個人投資家調査を中心に,近年の他の幾つかの個別年度の投資家調査を加えて,90年代以降の個人投資家の変化および投資状況を分析し,調査結果をまとめる。それと同時に,改革・開放以降の中国の社会構造や社会階層の変化は,株式投資にどのように影響したかを含めて考察したい。
 以上の個人投資家調査を通じて,主に次のような調査結果が得られた。まず第1に,中国の個人投資家は,基本的に男性が多く,短大卒以上の高学歴の投資家が増え,30歳代と40歳代を中心に,幅広い働き盛りのサラリーマン世代から構成されている。第2に,個人投資家の職業分布を見ても,地域分布を見ても,農林水産業および農村地域の投資家が極めて少なく,都市部における大衆投資家が形成されている。それと同時に,都市と農村および経済発展の速い沿海地域と遅れている内陸部のいわゆる格差問題は,株式投資にも表われている。第3に,「中間収入者」というミドルクラスが投資家の大半を占め,株式投資の「ミドルクラス化」が進んでいる。第4に,株式市場は短期売買が多く,また借金による投資や「ボロ株」の投資などの現象も見られ,基本的には市場の投機性が強い。第5に,株式市場においては,株価操作やインサイダー取引および粉飾決算などの不正行為が頻発し,また国有株や非流通株などに関わる政策リスクも高く,株式市場はまだ成熟していない「発展途上国型市場」であり,「移行経済型市場」の特徴も表われている。
 本号(第67号)では,個人投資家の性別,年齢,学歴および職業という基本的な属性を中心に,そして投資家の地域分布や収入および金融資産の状況を含めて考察する。次号(第68号)では,主に個人投資家の投資状況と市場認識を考察する。

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