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証券経済研究 第68号(2009年12月)

二元的所得税をめぐる政策決定―1990年代のスウェーデン税制を事例に―

伊集守直(静岡県立大学講師)

〔要 旨〕
 スウェーデンにおいて1991年に導入された二元的所得税の制度的特徴は,資本所得を勤労所得から分離し,地方所得税の平均税率および法人税と同レベルの税率で比例課税することにあり,二元的所得税の理念型に非常に近いものであった。同国が二元的所得税の導入に踏み切ったのは,経済のグローバル化が進むなかで,資本逃避を抑制しながら経済成長を達成し,同時に税収を調達することが要請されるなかでの選択であった。
 1991年改革以降のスウェーデンの二元的所得税に関わる税制改正は,二元的所得税の理念型からの変更を多く含むものであった。90年代前半の経済危機下においては,保守中道連立政権により「成長促進型」の税制改正が実施され,配当課税の廃止,キャピタル・ゲインに対する税率の引下げなど二元的所得税からの乖離が見られ,さらには資産課税の軽減・廃止がもくろまれた。
 それに続く90年代中盤以降の景気回復期には,社民党政権により「所得再分配型」の税制改正が実施され,国税勤労所得税の累進性の強化や純資産税の維持が図られると同時に,資本所得に対する中立的課税が復活し,二元的所得税への回帰が見られた。
 結果として,スウェーデンにおける二元的所得税は,経済効率性と公平性をバランスさせるという政策意図のもとに社民党政権のもとで積極的に維持されてきたということが明らかになった。

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