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証券経済研究 第69号(2010年3月)

欧州におけるファンド規制の動向

青木浩子(千葉大学大学院教授)

〔要 旨〕
 本稿は,ファンドに関連する近時の欧州指令を概観するものである。2007年金融危機を契機として,ファンドに関連したシステムリスクの統制(具体的には金融機関財務規制)について活発に議論されているが,本稿では,金融危機以前からのファンド規制の流れ(ファンド自体の業規制(登録,行為規制)および開示規制)に重点を置いた。
 欧州のファンドには,オープンエンドで指令の定める諸条件にしたがうUCITSと,それ以外の非UCITSとがある。UCITSは四次にわたる改正を経て,指令内容も商品としての実績も練れたものとなっている。一方,非UCITSについては,本稿で紹介するように,どのような規制をすべきかの基本方針がまさに定められようとしている。
 欧州に顕著な事情として以下を指摘できる。
 (1)市場競争を重んじ,そのために規制を調和化しようとする志向が強い。これは,ファンド私募に関する条件を調和化しようとする試みで特に顕著である。
 (2)ファンドの商品特性に応じた個別扱いを認め,投資商品あるいは集団投資スキームといった広い範囲での規制の横断化にこだわらない。これは,リテール向け不動産投資ファンドの例で特に顕著である。
 (3)そのほか,消費者保護のための開示内容の横断化や,目論見書指令と金融商品市場指令MiFIDとにおける適用免除要件となるプロ投資家の定義の同一化などの,従来の規制動向に即した規制の整備が進められている。
 すでにルクセンブルクやアイルランドなどの特定国にファンド業務が集中する傾向が見られるが,以上の内容の指令が実現すれば,特に非UCITS業務について,一層の発達と集中とが進行するであろう。

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