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証券経済研究 第70号(2010年6月)
イギリスにおけるカバードボンド市場の新展開
簗田優(獨協大学大学院博士後期課程)
〔要 旨〕
2007年夏に顕在化したサブプライム危機は,2008年9月のリーマン・ショックを経て世界的な金融危機へと深刻化した。危機の背景には,住宅ローン担保証券(MBS)をはじめとする資産担保証券(ABS)や,またそれらを再証券化した債務担保証券(CDO)等のオフバランス型証券化商品に内在する不完全性が,証券化技術の本来的な目的と異なる利用方法や投資家のハイリスクな投資行動,そして世界的な低金利政策等の結果生じた過剰流動性とも相俟って深刻化した危機であった。そして危機の深刻化とともに,多くの国で住宅金融市場も停滞した。
このような状況下,これまで証券化商品市場で一定のプレゼンスを示していたイギリスでは,今後はオンバランス型証券化商品であるカバードボンド(Covered Bond)の市場を拡大させ,それにより金融市場,特に住宅金融市場の回復を後押ししようとする動きがある。カバードボンドはドイツを中心として主にヨーロッパで多額に発行されているが,イギリスではこれまであまり発行されてこなかった証券である。具体的には,近年になりイギリスではカバードボンドに関する特別法の整備が進展し,2008年3月6日にThe Regulated Covered Bonds Regulations 2008が発効した。世界の金融市場および証券化商品市場では高いプレゼンスを示しているものの,カバードボンド市場においてはプレゼンスが低かったイギリスにおけるこのような変化は,イギリスの住宅金融市場の回復に一定の貢献が期待できるだけでなく,イギリス住宅金融市場の規模から考えれば,今後の世界金融市場および証券化商品市場にも影響を与える可能性もある。
本稿では,このように新たな展開を見せ始めているイギリスのカバードボンド市場について考察を行い,また今後へのインプリケーションを導き出す。
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