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証券経済研究 第77号(2012年3月)
株式市場の分散化およびそれに関する実証研究について
福田徹(当研究所主任研究員)
〔要 旨〕
アメリカやヨーロッパでは,株式取引における市場の分散化が著しい。アメリカでは,ニューヨーク証券取引所,ナスダック証券取引所ともに自らが管理する上場銘柄について30%前後のシェアしか保有していない。ヨーロッパの主要証券取引所についても,そのシェアは60%超程度まで落ち込んだ。我が国においては,PTSで取引された株式が日本証券クリアリング機構で清算および決済が可能となった2010年7月以降,その傾向が観察されるようになっている。そのシェアは2010年の1%程度から2011年末には6%近くまで達している。これは,株券の受け渡し等について不安を抱きPTSでの取引に躊躇していた機関投資家が参入するようになったからである。加えて,PTSが証券取引所と比較してより細かい呼び値を提供しており,PTSのシェアがさらに伸びる可能性がある。
一方,PTSのシェアが大幅に上昇した欧米においては,各種のスプレッドおよび気配値の仲値や株価によって算出される標準偏差を利用して市場の質に対する分散化の影響を計測することを主眼とする実証研究が行われている。ただし,それらの結果が同一の方向性を持っていたとは言いづらい。これは,株式市場を取り巻く環境が近年大きく変化しているためデータの利用期間によって違いが発生しているからであろう。我が国においても市場の分散化を主題とする実証研究を実施する必要があることは確かである。しかしながら,実証研究の結果に対する解釈はその時点での様々な要因を念頭に置きながら慎重に行うべきであろう。
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