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証券経済研究 第77号(2012年3月)
証券市場にとって,流通市場(注文控え)の透明性は必要か?
広田真人(首都大学東京客員教授)
〔要 旨〕
証券市場の最も大切な任務とは何かと言えば,「“出来るだけ安く買い,出来るだけ高く売る”環境の整備」でも無ければ,いわんや「取引量の最大化」でも無く,“FVに出来るだけ近付ける”という意味での良い値段を付けること,もっと言えば所有と分離されたプロとしての経営者に資金提供者の最低要求利回り(=資本コスト)を提示することにある。
この任務が美しい御伽噺でしかなく,その非現実性の証明も赤子の手を捻るほどに容易で,かつ「要求利回り」といっても判断素材が予想値である以上大雑把なものでしかないことは百も承知であるが,それでもこの方向性を持たない証券市場はゲームセンターでしかない。
そしてこの任務に貢献するのは,「IRの充実」であって,「流通市場の事前の透明性」ではないだろう。
この問題の本質は,<資本コスト=投資家の要求利回り>とは,流通市場上の要求利回りではなく,実体経済上の要求利回りである点にあり,そうでなければ,経営者はその責任を全う出来ない。
現代ファイナンスも,この広義のズレに気付いており,「情報の非対称性」というお馴染みの形で,ゲーム論を組み込んだマーケットマイクロストラクチャーを中心にこの問題を処理しようとしているが成功しているとは思えない。
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