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証券経済研究 第79号(2012年9月)
米国における店頭デリバティブ規制アプローチの変遷
若園智明(当研究所主任研究員)
〔要 旨〕
本稿では,米国の店頭デリバティブに対する規制アプローチの変遷を概観した。
主に農産物を対象として発生したデリバティブ取引は,当初は基本的に取引所取引に限定されていた。その後,90年代初めの規制緩和によって,店頭デリバティブ市場は大きく拡大する。この背景には,デリバティブ取引の多様化へのニーズと米国市場の国際的な競争力強化の考えがあり,この時期の規制は市場競争と市場規律を重んじる,いわば市場委任型のアプローチであったと言える。市場の拡大にともない,90年代にデリバティブ取引による巨額損失を出す機関が出現したことによって,規制の見直しを余儀なくされたが,あくまでも市場参加者によるリスク管理の改善や自主規制の強化に留まり,店頭デリバティブ取引への直接的な規制の強化とはならなかった。
ドッド・フランク法のTitleⅦによって,デリバティブ市場全般が規制の対象とされ,CFTCやSEC等の連邦監督機関に連邦法による監督権限が与えられた。また,中央清算機関(CCP)などの市場インフラが整備された。同法によって,米国の規制アプローチは市場の直接的な監視型へと変化したことに間違いはない。このような新たな規制アプローチにとって,CFTCやSECなどの連邦監督機関の十分な管理能力が重要であるが,新規則等には多くの除外規定が設けられ,その構造は複雑であり,実際の法規制の運用にとっては足枷となろう。
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