トップ  >>  出版物・研究成果等 >> 証券経済研究 2012年度 >> 第79号(2012年9月)

出版物・研究成果等

当研究所の出版物の購入を希望される方は、「刊行物購入について」をご覧下さい。

証券経済研究 第79号(2012年9月)

フラッシュ・クラッシュ―米国株価急変動の再考―

吉川真裕(当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 2010年5月6日木曜日,アメリカで14時40分から15時までの20分間にダウ指数が約5%急落した後,ほぼ同じだけ反騰するという株価の急変動が生じた。株価指数の変動幅とスピードが稀にみる水準であり,フラッシュ・クラッシュ(flash crash)という呼び名が定着することになった。8月にはSECとCFTCによる共同報告書が9月に公表されると報じられたが,9月中には公表されず,10月1日になって共同報告書はようやく公表された。
 本稿では,フラッシュ・クラッシュに関するSECとCFTCによる共同報告書をもとにして,5月6日に何が生じていたのか,中間報告書では特定できなかった原因は解明されたのかについて考察する。結論から言えば,株価急変動に関わる多くの要因は列挙されたが,原因を特定することはできていないというのが現状である。しかし,株価急変動に結びついた多くの要因に対して,さまざまな対策がすでに講じられており,市場全体を巻き込む形で株価急変動が再発する可能性は低いと考えられている。
 ところが,2011年8月18日と8月25日,アメリカのメディアではドイツでフラッシュ・クラッシュが生じたという記事を掲載した。しかし,フラッシュ・クラッシュが生じたとアメリカのメディアが報じたドイツではフラッシュ・クラッシュが生じたという認識はなく,フラッシュ・クラッシュの再来を恐れるアメリカのメディアだけがドイツで生じた現象をフラッシュ・クラッシュと呼んでいるようである。
 そこで,ドイツで生じた株価の急変動と比較してアメリカで生じたフラッシュ・クラッシュとは何であったのかについて再考する。今のところ,アメリカで生じた現象は特別であり,2010年5月にアメリカで生じた現象こそがフラッシュ・クラッシュと呼ばれるべきものというのが結論である。

お探しの出版物が見つからない場合は「出版物検索」ページでキーワードを入力してお探しください。