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証券経済研究 第80号(2012年12月)
ドイツの財政収支と国債―ドイツでユーロは「危機」なのか?―
代田純(駒澤大学経済学部教授・当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
2011年までを見る限り,ドイツの経済動向は輸出を中心に比較的良好である。上昇する賃金や企業利益により,税収は大幅に増加し,2011年の一般政府財政赤字対GDP比率は-1%となった。ドイツの輸出は対ユーロ圏向けから,中国やロシアなど新興国向けにシフトしている。
輸出好調を背景とし,ドイツで財政赤字は縮小している。ドイツ国債の新規発行額は減少し,需給が改善していることもあり,長期国債の利回りは1.3%(2012年7月)まで低下した。外国人による政府債保有シェアは約56%(2011年)まで上昇しており,海外からの資金流入が続いている。また2012年7月にはECBの利下げを契機として,2年物国債の利回りはマイナスとなった。
ドイツ経済は堅調であったが,問題点が無いわけではない。第一に輸出主導型であり,内需を中心に景気減速が懸念されること,第二に規制緩和が続いてきたこともあり,国内の資産格差等が拡大してきたこと等である。しかし,最大の問題は,ユーロ圏加盟国間の決済システムであるTargetⅡにおいて,ドイツから南欧諸国向けの貸出債権が積み上がっていることであろう。
とはいえ,ドイツにとっては,ユーロ危機によって,ユーロの為替レートが低下し,ユーロ安となることで,輸出が促進されている。このため,ユーロ「危機」はドイツにとって,居心地が悪いものではなく,ESMを含み,南欧諸国への救済策を小出しにすることが国益に沿ったものとなる。
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