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証券経済研究 第81号(2013年3月)
アジア債券市場の標準化・調和化の試み
―ASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)の議論の経緯と今後の展望―
椎名隆一(日本証券業協会国際部参事)
〔要 旨〕
1997年のアジア通貨危機を契機とするアジア債券市場の整備の議論を中核的に担ってきたアジア債券市場イニシアティブ(ABMI)は既に結成後10年が経過した。ABMIは,ASEAN+3地域内での債券発行・流通を促進するための様々な施策を推進する一方,アジア債券市場の規模は通貨危機当時と比べ格段の発展を遂げてきた。しかし,著しい伸びを見せている中国・韓国をはじめとする国債市場以外の各国債券市場の整備は未だ停滞しており,市場慣行,税制,市場インフラ等の各国のばらつきや,為替リスク・為替規制の存在,資本移動規制などクロスボーダー債券取引の障害となる制度的要因は未だ数多く残存している。この状況を打開し,さらなるアジア債券市場の整備を推進するため,2010年5月にABMIのもとに官民合同の審議ユニットであるASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)が設立され,同年9月より,参加国の債券市場の規制の枠組みと市場インフラの現状調査,及びその標準化・調和化に関する作業を展開している。既に,計11回の国際会議(2013年2月時点)が開催され,第6回北京会議(2011年12月)までの第1フェーズでは,各国債券市場の調査を完了し,その成果を1532ページに及ぶBond Market Guideとして公表した。第7回香港会議(2012年2月)から開始された第2フェーズでは,各国債券市場の中のプロ向け債券市場の一層の整備を推進したうえで,互いの市場を相互認知(Mutual Recognition)でリンクし,アジア多通貨建債券発行フレームワーク(Asian Multi-CurrencyBond Issuance Framework: AMBIF)に基づくアジア域内横断的プロ向け債券市場の仕組みを整えるべくより具体的な方法論について議論を進めている。この試みにより,アジアに眠る潤沢な貯蓄を,同じアジア域内での投資に向かわせる有効な仕組みが形成されることが期待される。本稿は,この議論の概況(特に,規制の枠組みを協議しているサブ・フォーラム1の活動)を紹介するものである。
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