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証券経済研究 第82号(2013年6月)
フランス銀行改革の意義と問題点—銀行規制・監督体制は強化されるか—
中川辰洋(青山学院大学経済学部教授・当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
銀行セクターの構造改革と金融システムの安定化を目標とするフランス銀行改革法が2013年3月に可決・成立した。これはオランド大統領の公約のひとつであり,銀行業務分離と規制—いわゆるフランス版“リングフェンスバンク”規制—を謳っているが,業務規制の焦点であるトレーディング部門のうちマーケットメーク業務を銀行本体の業務として容認する内容となっている。これによって,銀行が分離する資産は全体の数パーセントにすぎず,銀行サイドからみればほとんど「実害」がない。むしろ英米の規制強化の動きに逆行するばかりか規制緩和であり,とどの詰まり,リーカネン・グループの「投機的トレーディング業務はリテール銀行業務から分離すべき」との提言を骨抜きにする仕儀に等しいと酷評される始末である。本稿では今次銀行改革法の柱をなす銀行業務分離や規制を中心にその内容を紹介するとともに,その意義と問題点について検討し,最後にフランス銀行改革のEUの銀行規制ルール作成作業への影響を展望する。
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