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証券経済研究 第82号(2013年6月)
日本興業銀行100年の軌跡と証券業務(下)
小林和子(当研究所特別嘱託研究員)
〔要 旨〕
戦後の長期信用銀行法が制定されたのは,朝鮮動乱景気が続く,昭和27年である。その後の落ち込みを超えて,昭和30年代初めには『経済白書』が「もはや戦後ではない」と総括し,中半には経済は第1次高度成長期を迎えた。経済成長下の各種金融機関の競合過程で,長期信用銀行法は旧興銀を母体とする日本興業銀行を始めとする長期信用銀行3行に,民間企業の設備資金等の長期資金供与の必要性という大義名分で長期信用銀行債券の発行権限を付与した。長信銀は旧特別銀行ほどに国家性が強くはないが,民間の普通銀行にはない金融債発行権限を持ち,かつその権限を守るために行政指導で普通銀行には銀行社債の発行を禁止したという,法と行政指導に守られた銀行であった。こうした銀行の存在意義に対する疑問は早くから出ていたが,興銀はことごとく「意義がある」と論破し続けた。その結果,改革の機会を失し,金融機関の同質化が進み,高度成長が消え失せた後,他行と同様に不良債権を抱えて公的資金の注入を受け,単独経営を諦めて経営統合の道を選んだ。興銀の100年を振り返ってみれば,すでに第2次世界大戦の終結と共にその役割を終え,戦後は担保付社債発行の固守を含め既得権の保持に汲々として,長期金融確保の別の道,すなわち市場発達の道を強く認識しえなかったといえるのではないか。
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