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証券経済研究 第83号(2013年9月)
米国におけるマクロ・プルーデンス体制の構築
若園智明(当研究所主任研究員)
〔要 旨〕
金融危機の発生により,個別金融機関の財務や業行為の健全性や消費者(投資家)保護を対象とするミクロ・プルーデンス政策に加え,システミック・リスクの防止と軽減を主目的とするマクロ・プルーデンス政策の重要性が強く認識された。このマクロ・プルーデンス政策には,単に大手銀行や金融会社グループの総括的な監視に留まらず,これらの相互連関性や金融システム全体におけるリスクの分析や調査,金融システムが不安定となった時の政策対応なども含まれる。
2010年7月の大統領署名によって成立した通称ドッド・フランク法は,マクロ・プルーデンス政策を担う会議体として金融安定監督協議会(FSOC)を設置するとともに,議長がその主要なメンバーである連邦準備制度理事会(the Board of Governors of the Federal Reserve System, FRB)の権限強化などを行っている。
ドッド・フランク法以前の米国連邦政府の体制は,諸連邦監督機関によるミクロ・プルーデンス政策を中心としつつ,FRBが主体となり金融市場全体の安定性を監督してきた。また金融危機の発生以前からも,①Disintermediationの進展,②1980年代に顕著となった規制の緩和,③金融イノベーションへの規制的対応の必要性など,マクロ・プルーデンス政策を含めた規制の抜本的改革の必要性は認識されていた。
本稿では,マクロ・プルーデンス政策に関する先行研究および米国内での政策議論を概観し,ドッド・フランク法によって新たに構築されたマクロ・プルーデンス政策体制について論述する。
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