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証券経済研究 第89号(2015年3月)
バブル崩壊以降の国債累増・国債保有構造と国内銀行の国債保有
勝田佳裕(広島修道大学准教授)
〔要 旨〕
本稿では,バブル崩壊以降の国債累増過程と国債保有構造の変化を確認した上で,国内銀行の国債保有状況を比較検討した。
まず,バブル崩壊以降の国債累増過程を概観した。2005年度から2007年度までの期間を除き,基本的に新規国債発行額は増加傾向にあり,国債残高は累増している。次に,バブル崩壊以降の国債保有構造の変化を概観した。増加を続けてきた国内銀行の国債保有残高はQQE導入後に減少し,国債保有構造における割合も低下している。代わって,リーマン・ショック前の一時期を除き増加を続けてきた日本銀行の国債保有残高はQQE導入後に更に増加し,国債保有構造における割合も急上昇している。金利上昇による含み損の発生を未然に回避するため,都市銀行を中心に,国内銀行が日本銀行による国債買いオペレーションに応じた結果とみられる。
以上を踏まえた上で,最後に,都市銀行と地方銀行・第二地方銀行の国債保有状況及びメガバンク3行の国債保有状況を比較検討した。前者については,QQE導入後に都市銀行が国債残高を急減させた一方で,地方銀行・第二地方銀行のそれはほぼ横這いであるという違いが確認できた。この背景には,アウトライヤー基準と収益の確保があるとみられる。後者については,世界金融危機以降,三井住友銀行は他のメガバンク2行よりも将来の金利上昇(国債価格下落)を意識した国債投資行動をとっていることが確認できた。
以上から,今後の政府及び日本銀行の政策が,都市銀行・地方銀行・第二地方銀行それぞれの経営に異なる影響を与える可能性,また,メガバンク3行それぞれの経営に異なる影響を与える可能性があることを指摘した。物価上昇率が目標値を超えた場合,QQEの縮小(いわゆる出口政策)による金利上昇が予想される。政府及び日本銀行には,個々の銀行経営に与える影響を考慮した,柔軟かつ繊細な政策対応が求められよう。
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