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証券経済研究 第90号(2015年6月)
カーニー体制下のイングランド銀行金融政策
斉藤美彦(大阪経済大学教授・当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
2013年7月にイングランド銀行総裁の座についたのは,その300年以上の歴史で初めての外国籍(カナダ人・現在は英国籍)のマーク・カーニー氏であった。カーニー総裁下のイングランド銀行の金融政策は,キング前総裁時代に下限近くにまで引き下げた政策金利の変更は行わず,量的緩和政策における資産購入額の変更も行わずにこれまで推移している。一方,就任後に導入したフォワード・ガイダンスについてはわずか半年後に変更せざるをえなくなり,マイナーチェンジを行った貸出促進策(FLS)もその効果がほとんど出ていないこと等,苦戦が続いている印象が強い。
その一方で,量的緩和政策の当初の単純マネタリスト的な一般向けの説明を事実上撤回し,内生的貨幣供給説を前面に出し,「貨幣乗数」アプローチを否定しつつ,その効果が限定的であるかのような説明に変更している。これが,同行がその時期が近くにはないように市場に印象付けてきた量的緩和政策の出口戦略にどのように影響していくのかが,国債の買取りを行っている子会社の資産買取基金(APF)の損失について財政負担となる規定がどのように作用するかとともに注目される。また,選択肢にあるかもしれない金融抑圧への非難は大きいと予想されることから,金融政策の舵取りはますます難しくなってきている。
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