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証券経済研究 第90号(2015年6月)

ギリシャ新政権の100日—ユーロ圏債務処理のエンドゲーム—

中川辰洋(青山学院大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 本稿のテーマは,2015年1月25日のギリシャ総選挙で,アントニス・サマラスの与党・新民主主義党を制して政権の座に就いたアレクシス・ツィプラス率いるシュリザ(急進左派連合)の債務再交渉要求をめぐってくり広げられたEU/ユーロ圏の協議の経緯と帰結を,その背景にある諸事情とともに分析し,あわせてギリシャひいてはユーロ圏の債務処理の行方を展望するところにある。急進左派政権の“反緊縮・反トロイカ”政治闘争は,政権発足から約100日後の4月28日,EUなどの債権団の意向を映した財政規律の確立と経済構造の改革を約して終結する。ツィプラス政権の100日闘争は債務処理の「エンドゲーム」といえるが,“ゲームオーバー”がただちにゴール間近というわけではない。社会保障費を中心とする財政支出の削減,労働市場の改革,ERT(国営放送)をはじめ国公営企業の民営化などに反対する勢力が与野党を問わずすくなくないからである。ツィプラス政権が6月末に予定されている改革プログラムを策定し,ユーロ圏諸国や債権団の最終的承認を得るまでになお紆余曲折が予想される。

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