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証券経済研究 第91号(2015年9月)

トゥー・ビッグ・トゥ・フェイル(TBTF)問題について

佐賀卓雄(当研究所理事・主任研究委員)

〔要 旨〕
 2007-08年のグローバルな金融システム危機を受けて,G20の下でFSF(Financial Stability Forum)を改組して創設されたFSB(Financial Stability Board)が金融規制改革に取り組み始めてから6年が経過した。FSBはグローバルに活動するクロスボーダー金融機関の秩序ある破綻処理を実現するために,破綻処理スキームを見直すことをアクション・プランの最重要の改革項目として掲げ,各国が満たすべき基準を公表し,今日まで各国の破綻処理スキームの構築と調整を先導してきた。
 今回の危機が大手金融機関の破綻によって引き起こされ,明確な指針のない下で公的資金の投入を伴う場当たり的な救済や破綻処理によって少なからぬ混乱が引き起こされたことに鑑みれば,グローバルな破綻処理スキームの構築が最優先の改革課題であることは当然である。
 FSBはその破綻が金融システムに多大の影響を及ぼす可能性のある金融機関をG-SIFIsと認定し,各国にその破綻処理スキームの構築に向けた取組みを促し,国際的な調整を進めてきた。しかし,銀行,保険はともかく,それ以外の金融機関のG-SIFIsの認定は未だ完了していない。
 アメリカでは,大手金融機関の破綻は以前よりトゥー・ビッグ・トゥ・フェイル(TBTF)問題として政策担当者や市場関係者の間で関心がもたれてきた。これは大手金融機関が経営的に苦境に追い込まれたときに,それらについての秩序立った破綻処理スキームが欠如していたことを示している。この問題の終結のためには,何よりもそのためのスキームが必要とされたのである。2010年7月に成立したドッド=フランク法は新たに「秩序立った清算権限」(OLA)という破綻処理制度を設け,この課題に応えようとした。
 しかし,その前提となる巨大化かつ組織および業務が複雑化した巨大金融機関の正確な実態を把握すること自体が多大な困難を伴うことが明らかとなっているのが現状である。SIFIsに提出を義務づけた破綻処理計画(リビング・ウィル)も監督当局には満足のいく内容にはなっていない。
 さらに,各国間の破綻法制の調整ということになると,各国ベースで進められているのが現状で,グローバルに整合性の取れた破綻処理スキームからはほど遠い。
 これまでのFSBとアメリカでの破綻処理スキームの構築に向けた取り組みを整理し,今後の課題について検討する。

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