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証券経済研究 第91号(2015年9月)

我が国の法人税と課税所得

代田純(駒澤大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 本稿は,法人税税率に関する議論を検討したうえで,我が国の法人税の課税所得が,受取配当の益金不算入,繰越欠損金制度等によって浸食されてきたことを明らかにする。
 法人税税率を議論する場合,課税所得の範囲,個人所得税税率との関係が不可欠である。各国で法人税の各種控除が異なるため,課税所得の範囲も異なり,税率だけを議論することには問題がある。また法人擬制説の観点から,法人段階での課税は個人段階で調整される必要があり,個人所得税との関係が重要である。
 我が国の法人税の課税所得に影響する要因として,受取配当の益金不算入と繰越欠損金制度が大きい。法人の株式相互持合いが解消していると言われるが,日本では親子上場が依然として多く,親子持合いには受取配当の益金不算入が利点となる。また日本の法人税では,欠損法人の比率が高く,近年では法人の70%程度で推移してきた。欠損法人の多くは,繰越欠損金制度によると見られる。
 メガバンクの場合,2000年前後に貸倒引当金の損金処理により,課税所得が大幅な赤字(欠損)となり,この欠損金が繰越欠損金制度により,10年程度繰り越されてきた。ただし,貸倒引当金の損金算入は限度額があり,会計上費用となっても,税法上はすぐに損金処理できない。そこで税効果会計の繰延税金資産を計上し,貸倒れが確定した時点で損金処理される。また繰越欠損金制度も税効果会計に属し,繰延税金資産に計上される。税効果会計は,税法と会計の相違による一時差異を解消する制度である。しかし,従来日本では,欠損金の繰越控除限度額や繰越期間が緩かったこともあり,一時差異の解消が長期にわたった。

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