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証券経済研究 第94号(2016年6月)
HFTとダーク・プールに対する規制状況—規制状況の国際比較—
吉川真裕(当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
注文と取り消しを頻繁に繰り返す高頻度取引(High-Frequency Trading:HFT)や,気配値を公表しない取引所類似施設であるダーク・プールについて海外では盛んに報じられ,これらに対する規制の導入も取り沙汰されている。
こうした取引がおこなわれる度合いは各国・各地域において異なり,これらに対する規制の度合いも異なるはずであるが,本稿で明らかにするように,利用状況と規制の度合いは比例してはいない。アメリカのようにこうした取引が盛んな国ではすでに利用している利害関係者が多く,規制導入に対する反対勢力も強いので,反対勢力を納得させる根拠を提示して規制の導入に踏み切るには市場関係者との十分な対話が必要であり,今のところ厳格な規制の導入時期の目途は立っていない。
他方,オーストラリアやカナダではアメリカでの状況を踏まえて国内ではそれほど取引が盛んではないにもかかわらず,規制当局の主導で予防的に部分的な規制措置が導入されている。欧州連合(EU)もかならずしも根拠の明らかではない数値基準に基づく規制の導入方針を固めているが,すでに各国の権限で規制を導入しているEU加盟国の実績をみる限り,規制導入の効果は明らかではない。
5つの国または地域にけるHFTとダーク・プールに対する規制状況のうち,①HFTに直接影響する措置(税または利用料),②HFTに対するシステム対応義務(取引市場と業者),③ダーク・プールに対する取引制限,という3点に絞って比較してみると,カナダでは3つとも導入されており,オーストラリアでは②と③の2つが導入されている。そして,アメリカでは②取引市場のみを対象としたシステム対応義務と③レギュレーションATSに基づく5%の取引シェア制限,ヨーロッパ全体では現時点で②取引市場のみを対象としたシステム対応義務(MiFID Ⅱ施行後は③4%・8%の取引シェア制限を導入予定)であるが,わが国では①システム利用料のみというということになる。
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