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証券経済研究 第95号(2016年9月)

ACEの理論と実際

井上智弘(一般財団法人電力中央研究所主任研究員)
山田直夫(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 現行法人税が企業の投資や資金調達行動に歪みを与えることはよく知られているが,企業活動の国際化に伴い法人税負担の国家間の差異に注目が集まるようになってきたため,この問題に対する関心がより高まっている。この問題に対処する税制として,IFS[1991]が提案したACE(Allowance for Corporate Equity)がある。ACEあるいはそれに類似した制度は欧州を中心に既にいくつかの国で導入されており,ACEについては理論研究だけでなく,導入国の実態分析や導入シミュレーションも行われている。その一方で,一度はACEを導入したものの,その後廃止した国が存在し,実証研究においても一致した結果が示されておらず,その評価は定まっていない。
 そこで本稿では,ACEの政策的根拠となる理論分析,導入国を対象とした実証分析,欧州諸国を中心としたシミュレーション分析について,それぞれ整理した。本稿で明らかになったことは,以下の2点にまとめることができる。1点目は,ACEは理論上だけでなく,実態やシミュレーションの結果を見ても,効率性を高めることである。ただし,設備投資に与える影響については評価が分かれている。2点目は,ACEによって中立性が実現するためには適正なみなし利子率の設定が重要であり,それは特に完全な損失相殺を行うことができない場合に大きな問題となるということである。

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