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証券経済研究 第95号(2016年9月)
生保相互会社の業務多角化と株式会社化
丸山高行(住友生命保険相互会社年金事業部審議役)
〔要 旨〕
現在,わが国生命保険業界では,M&A等による国内外の生命保険会社の子会社化・グループ化が活発に行われている。ただし,保険事業に特有の会社形態である相互会社がこうした事業拡大を進める場合,相互会社の特異性ゆえにいくつかの制約が存在する。具体的には①資金調達の機動性,②企業グループ形成の柔軟性,③非社員契約規制の存在の3点が指摘できるが,中でも非社員契約にかかる制限は相互会社の本質に関わる問題であり,今後,相互会社が現状以上に業務多角化を進めるにあたって,無視できない制約となる可能性がある。
本稿は,こうした状況にある相互会社にスポットを当て,その特異性を確認した上で,相互会社が業務多角化を図る上で具体的にどのような点が障壁となりうるかを明らかにする。また,この障壁の中でもやっかいな存在である非社員契約について法的論点を整理し,規制緩和の方向性を提示するとともに,解決策の1つである相互会社の株式会社化という,証券市場関係者にとって興味深いテーマについて,新たな簡便化スキームを提案する。このスキーム(「包括移転による株式会社化+持株会社設立」方式)によって,業務多角化を進める相互会社は株式会社化に加え持株会社設立によるグループ化を一度に果たすことが可能となり,様々なコストや事務負荷を大きく軽減できることが期待される。
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